『会計と社会 ~公共会計学論考 ~ 』の詳細情報

会計と社会
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タイトル 会計と社会
サブタイトル 公共会計学論考
著者 [著者区分]黒川 行治 [著・文・その他]
出版社 慶應義塾大学出版会 レーベル 慶應義塾大学商学会商学研究叢書
本体価格
(予定)
4700円 シリーズ
ページ数 760p Cコード 3034
発売予定日 2017-10-06 ジャンル 専門/単行本/経営
ISBN 9784766424683 判型 A5
内容紹介
▼「みんなが幸せになる会計」を求めて
 ――誠実な勤労者が損をしない社会を実現するために、会計は存在する

経済のグローバリゼーション、金融資本主義の蔓延、勤労者の地位低下・富の偏在、地球環境への負荷増大、政府財政破綻の危機に直面し、会計は、どのように対処してきたのか、どのような役割を果たすべきなのか。
本書は、公共哲学、社会政策論などの知見を踏まえ、「社会と会計」「市場と会計」「個人・組織と会計」「環境と会計」「公共・政府と会計」という五つの視点から、この問いに挑む。
それはまた、会計制度・政策設計の第一線で「あるべき会計」を探究し続けてきた一研究者の思索と討論の軌跡でもある。
目次
第1部 社会と会計

第1章 資本主義精神の終焉――公共会計学の勧めの背景
 1.自然の猛威と科学・技術の限界の認識
 2.科学・技術に対する社会科学の干渉
 3.生物種としての人間と環境思想――「二元論」・「一元論」と「環
   境主義」・「エコロジズム」
 4.自然物と人工物
 5.人間の特性――科学・技術の探求と共同社会の形成
 6.社会システム――資本主義が問題
 7.資本主義に内在する発展・成長という思想
 8.近代資本主義の成立した精神とは何か
 9.公共会計学の勧めの背景

第2章 会計・監査社会の変容のインプリケーション
 1.会計・監査社会の現状
 2.会計情報の変容の背景
 3.企業評価とイデオロギーの変化
 4.監査社会の進展の含意
 5.会計プロフェッションの位置付けの変化
 6.可視化の圧力と監視の社会的受容

第3章 利益情報の変容をもたらして要因は何か
 1.利益情報の変容と経済社会のグローバリゼーション
 2.会計情報の供給プロセスと影響要素の仮説
 3.国際会計基準の特徴
 4.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化
 5.経済社会のグローバリゼーションと会計社会の変容についての仮説
 6.仮説の検証努力――上場企業に対する意識調査の紹介

第4章 非金融負債の公正価値測定の含意
 1.IASB の志向
 2.改定案の提案――蓋然性要件の削除と期待値法のみの採用
 3.蓋然性に問題ありとする従来の論拠
 4.会計志向(アプローチ)の違い
 5.市場参加者の取引価格決定要素
 6.非金融負債の公正価値測定が意味するもの
 7.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化
 8.公正価値志向の会計の需要要因

補論1 会計基準統一化の転機と記憶
 1.日本の会計社会が直面した「黒船」
 2.世界統一会計基準導入の長所と短所
 3.会計基準の世界的統一化の概略
 4.日本のコンバージェンスに関する取組み
 5.IFRSs 強制適用の可能性の現出
 6.金融クライシスとFASB,IASB および企業会計審議会・ASBJの対
   応
 7.IFRSs の強制適用の回避
 8.エンロンの会計不祥事以降の監査をめぐる規制の強化

補論2 会計と社会との相互干渉
 1.郵政公社の財務会計基準と高速道路の資産評価・会計基準
 2.社会的選択と私的選択との相互干渉
 3.会計と経営との相互干渉
 4.会計と社会との相互干渉
 5.会計と市場との相互干渉
 6.会計と公共財の効率性との相互干渉
 7.研究余滴

第5章 社会企業モデルと会計主体論
 1.企業の社会的責任と説明責任
 2.企業の社会的責任論の概要
 3.会計主体論と社会企業モデル
 4.企業の主たる構成員がいなくなったらどうなるのか
 5.グローバルな社会的課題とグローバル社会企業
 6.企業市民モデルと拡張された説明責任

 第2部 市場と会計

第6章 市場の質と会計社会の対応
 1.会計情報の変容と市場の論理
 2.市場の質とは何か
 3.資本市場における競争の質
 4.資本市場における製品(企業経営)の質
 5.資本市場における情報の質
 6.市場参加者の合理的判断
 7.契約の不完備性と公平性

補論3 会計情報の市場の規制論
 1.財務報告規制の経済学
 2.規制のない市場を支持する議論
 3.会計情報の市場への規制の擁護論
 4.規制支持論と自由市場論の比較
 5.会計規制の不完全性
 6.規制のプロセス
 7.利害関係者の行動の特徴
 8.会計基準の経済的帰結

第7章 機関投資家と市場を非効率にする要因――解説文献の要約
 1.情報の主たる利用者としての機関投資家
 2.投資関連業界(ファンド・マネジャー,アナリストなど)の構造問
   題
 3.市場の効率性とファンダメンタル分析
 4.ファンダメンタル分析に関する諸議論
 5.行動ファイナンス理論と投資の心理学の仮説

第8章 「利益の質」の概念をめぐる諸議論と監査の意義
 1.利益の質をめぐる検討課題
 2.会計情報の供給プロセスとその影響要素
 3.「利益の質」の概念(constructs)の再整理
 4.非効率な市場と利益の質との関係
 5.利益の質の概念と監査との関連
 6.利益の質と市場の質との相互関係

補論4 わが国の資本市場の実態および会計の役割に関する検証例
 1.資本市場に関する諸仮説の背景
 2.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その1
 3.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その2

第9章 予測要素がもたらす確率的利益測定の概念
 1.確率的測定と利益の質
 2.認識基準と確率的推定
 3.測定基準と確率的推定
 4.会計測定値の意思決定論的な解釈
 5.監査の情報提供機能の再評価
 6.予測要素の影響の増大

 第3部 個人・組織と会計

第10章 取引における公正性の源泉
 1.取得原価の二面性と合理的な取引決定の条件
 2.消費者保護と中古米国車の購入事例
 3.富の追求は終わり,労働は喜びをもたらす
 4.国家の繁栄の源は悪徳なのか公正なのか――バーナード・マンデ
   ヴィルとアダム・スミス
 5.相互性と情報

第11章 個人の行為の判断基準と組織の内部道徳
 1.会計不祥事と企業および個人の道徳(倫理)
 2.善行(善人)とは何か――ロールズの解釈
 3.美徳倫理
 4.道徳的発達の段階
 5.公共倫理の主張――公共哲学の代表的な所論
 6.官僚制組織と内部道徳
 7.道徳的判断規準を持つことの大切さ

第12章 企業統治と経営者報酬・従業員給料の公正な分配
 1.会計の利害調整機能と労働対価の分配
 2.企業はどのように統治されているのか
 3.役員報酬の公正性をめぐる議論
 4.結 論

第13章 企業の決算行動を決定する要因
 1.ポジティブ・アカウンティング指向の会計研究の特徴
 2.仮説の前提条件と日米の相違
 3.説明変数の追加
 4.社会的選択としての各国の会計基準の相違を決定する要因
 5.私的選択としての企業の決算行動の説明要因の体系
 6.決算行動を説明する社会的・文化的・哲学的要因

第14章 人的資産の認識と測定
 1.リストラ問題と非正規雇用政策の効果の類似性
 2.従来の研究――人的資源の測定方法と勘定記
 3.いくつかの問題点
 4.既提案の物的資産の認識・測定に類似する会計処理方法
 5.提 案
 6.議 論
 7.会計の機能・役割との関連

第15章 創造会社法私案と人的資産・労務出資の会計
 1.20 世紀末のわが国の経済状況
 2.ベンチャー企業待望論と創造会社法私案
 3.会計測定対象としての創造会社の特徴
 4.会計測定方法の提案
 5.人的資産と労務出資のオフバランス
 6.人的資産・労務出資の計上と人的資産償却の意義
 参考 パートナーシップ会計,組合会計および合名会社会計の検討

第16章 企業結合会計方法の論点と解決策――フレッシュスタート法の勧め
 1.企業結合会計基準の一大転機
 2.株式交換・移転制度の意義
 3.企業結合会計基準に見る企業結合の意味と類型
 4.プーリング法の変遷と論理の検討
 5.プーリング法の禁止とフレッシュスタート法の強調
 6.企業会計審議会「企業結合に係る会計基準」(2003 年)の検討
 7.企業統合・再編とフレッシュスタート法の是非
 8.フレッシュスタート法の論点の検討
 9.独自性ある企業結合会計基準の可能性

第17章 京セラとヤシカの合併――フィールド・スタディ
 1.救済ではあったが,シナジー効果を期待した積極的異業種合併
 2.合併会社(京セラ)の状況
 3.被合併会社(ヤシカ)の状況
 4.合併時点の意思決定
 5.合併後の評価――ヤシカ・岡谷工場
 6.合併後の評価――京セラおよび全社的視点
 7.成功事例であると結論

第18章 企業結合に関するのれんの会計の論点
 1.償却処理から非償却処理への転換
 2.のれんとその他の無形資産との峻別
 3.従来から検討されている論点
 4.新たな論点の提起

第19章 退職給付会計基準の論点
 1.新たな退職給付会計基準の設定
 2.資産・負債,費用・収益の総額・両建て計上方式と純額・差額計上
   方式
 3.現在価値計算における割引率とリスクの考慮
 4.発生給付評価方式の意義と影響
 5.数理計算上の差異の処理方法

 第4部 環境と会計

第20章 パリ協定前文の願意と会計責任の拡張
 1.環境問題をめぐる3 つの対立軸
 2.温暖化対策の合意成立
 3.前文の願意――ロールズの「公正としての正義―格差原理」の想起
 4.科学技術開発による解決――持続可能な発展の含意は何か
 5.自主的目標設定・業績測定,社会企業,トリプル・ボトムライン
 6.「統合報告」の思想は経済的パフォーマンス以外の目標を掲げる企
   業を促進するか
 7.経済的パフォーマンス最大化目標を転換させる手段としての会計責
   任の拡張
 8.「豊かさ」の別指向――環境問題は公共社会の有り方の問題でもあ
   る

第21章 持続可能な発展と会計の転換
 1.持続可能な発展の問題
 2.外部性と共有資源問題
 3.公共政策の概観
 4.環境マネジメント
 5.環境保全コストと環境保全努力に対応する効果の測定
 6.認識の転換と社会会計モデル
 7.コストとベネフィット,費用と収益の意味するもの
 8.ミクロ社会会計の再認識と利害関係者への付加価値の分配

第22章 温室効果ガス排出量取引をめぐる会計上の論点
 1.京都メカニズム第1 約束期間の始まりと日本の状況
 2.資産の特質を中心とする排出量取引会計の検討――収益・費用アプ
   ローチの残像
 3.排出クレジットの法的性質の検討
 4.排出クレジット引渡義務を中心とする会計処理――資産・負債アプ
   ローチの適用
 5.設例によるGISPRI 案の拡張とIFRIC 案の会計処理の例示
 6.環境省「クレジット会計処理検討委員会」案
 7.未解決の問題の解釈と展望――4 タイプの会計処理方法の意義

補論5 国際財務報告解釈委員会解釈指針第3 号「排出権」の検討
 1.解釈指針第3 号「排出権」の公開草案と成案
 2.設例の前提の変更と会計処理
 3.成案の結論の検討

補論6 試行排出量取引スキームにおける会計上の取扱いの検討
 1.わが国の排出量取引の実験――試行排出量取引スキームの開始
 2.実務対応報告第15 号改正の検討経緯
 3.検討にあたっての基本方針と主たる課題
 4.事前交付により取得した排出枠の会計処理に関するASBJ の提案
 5.K 案の考え方
 6.設例によるA 案とK 案の違い
 7.参加企業の最終目標年度一括処理
 8.課 題

補論7 京都議定書第1 約束期間後の空白問題の危惧――東日本大震災前(2010―2011年3月)の日本
 1.環境問題に対処する姿勢
 2.排出クレジットの発生と排出既得権の人為的設定
 3.京都メカニズム継続に対する憂慮すべき状況と公共哲学の復権
 4.空白問題と共通善の維持
 5.「共通善」の心得と経済産業省「二国間オフセット・クレジット制
   度」および東京都「総量削減義務と排出量取引制度」の登場

補論8 京都メカニズム脱退後のJCM の意義――東日本大震災後(2014年3月)の日本
 1.グランド・デザインの重要性
 2.JCM プロジェクトの案件――発展途上国のエネルギー対策の支援
 3.外部性と温室効果ガス排出防止対策
 4.将来の日本国の有り方・目標という観点

第23章 資産除去債務をめぐる会計上の論点
 1.資産除去債務の会計基準設定の経緯
 2.資産除去債務の認識の範囲
 3.資産除去債務の測定
 4.時間経過に伴う利子費用の意義
 5.資産・負債両建て計上と引当金処理の意義

 第5部 公共・政府と会計

第24章 企業の海外戦略と国民の経済的繁栄
 1.サントリー社のビーム社買収
 2.経済社会の繁栄度の指標――国民経済計算とわが国の現状
 3.「わが国の企業(日系企業)」とは何か
 4.自由の尊重と市場経済重視
 5.カール・ポラニーの「自己調整的市場」に関する洞察
 6.経営者の使命は何か

第25章 納税行為の意義
 1.わが国財務状況の確認と増税の必要性
 2.租税による歳入と公的支出に見る国の役割
 3.社会的正義の諸説再述
 4.公私分割と社会的正義の諸説
 5.納税行為をどのように理解して財政健全化に対処するべきか

第26章 公共社会とディスクロージャー
 1.ディスクロージャーに関する研究の役割
 2.ディスクロージャー課題の例示
 3.分析の手順――利害に関する構成要素の特定
 4.情報(ディスクロージャー)の利害への影響の検討
 5.キーとなる概念,観点,論理
 6.企業行動に関連した研究課題設定の例示
著者略歴(黒川 行治)
黒川 行治
慶應義塾大学商学部教授
1975年慶應義塾大学工学部管理工学科卒業、77年同大学大学院工学研究科修士課程修了、79年同大学大学院工学研究科博士課程中途退学(商学部助手任用のため)、1982年同大学院商学研究科博士課程単位取得退学、1999年慶應義塾大学博士(商学)。1979年慶應義塾大学商学部助手、助教授を経て1992年より現職。この間、1986~1988年、米国イリノイ大学訪問研究員。
日本ディスクロージャー研究学会会長、日本経営分析学会副会長、日本会計研究学会評議員などを歴任。さらに、金融庁「企業会計審議会」委員、国土交通省「道路資産評価・会計基準委員会」委員長、財務省「財政制度等審議会財政制度分科会」委員兼「法制・公会計部会」部会長、(一財)地球産業文化研究所「京都メカニズム促進のための会計・税務論点調査委員会」委員長、企業会計基準委員会「排出権取引専門委員会」委員、「公認会計士第2次試験」試験委員などを歴任。
著書に、『政府と非営利組織の会計(体系現代会計学9)』(編著、中央経済社、2012年)、『利益情…
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