『現象とデータから学ぶ 使える!化学熱力学』の詳細情報

現象とデータから学ぶ 使える!化学熱力学
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タイトル 現象とデータから学ぶ 使える!化学熱力学
サブタイトル
著者 [著者区分]勝本 之晶 [著・文・その他]
出版社 九州大学出版会 レーベル
本体価格
(予定)
3600円 シリーズ
ページ数 272p Cコード 3043
発売予定日 2024-05-10 ジャンル 専門/単行本/科学
ISBN 9784798503776 判型 A5
内容紹介
本書は、長大になりがちな熱力学自体の説明をコンパクトにまとめ、物理法則ではなく、物質と現象を話題の中心とすることで、初学者が「化学熱力学を使う」ことへのハードルを低くし、「使い方を身につけること」に的を絞った、新しいタイプのテキストである。

熱力学の枠組みを現代的な視点で説明する第1章、実際の現象やデータをもとに化学熱力学の使い方を直感的に学ぶ第2章、モデルを使って現象の理解を深める第3章で構成される。初歩的な微積分の知識があれば、大学初年度の学生でも読み進めることができる。第1章冒頭の「かんたんスタートガイド」には第1章全体の要点がまとめてあり、その内容を約束事だと割り切って第2章に進めば、近道で化学熱力学の実践的使用法を学ぶこともできる。この近道は、カリキュラムの関係で、1セメスターもしくは1クォーターくらいしか化学熱力学に充てられない場合にも有用であろう。

かんたんスタートガイドがあることにより、このテキストは次のような段階で読むことができる。

 第1段階:第1章のかんたんスタートガイド→第2章の♠がついていない節・項
 第2段階:第1章全体→第3章の第3.8節まで
 第3段階:第2章の♠がついている項、第3章の第3.9節以降

第2章の♠がついている項と第3章の後半は専門的な内容で、話題ごとにつまみ読みできるようにしてある。第1章の♣がついている項目は、第3段階の前に一度読み返すべき内容で、熱力学を整理してすっきりと頭に収めるためのものだ。♠がついている項目は、他のテキストではあまり説明されない(かなり)専門的な話題で、分野も材料から生物までなるべく幅広くとりあげた。

熱力学第1法則からエントロピーを数学的に導入し、さらに微積分の知識を使ってギブズエネルギーまでを一気に登場させることで、熱力学自体の説明を最小限に圧縮し、残りの紙面の多くを化学熱力学の使い方の説明に割く。古典的な実験から現代的なテーマまで幅広い話題を取り上げることにより、大学初年度から大学院まで利用できるテキストになっている。また物性系から生命系までさまざまな話題を取り入れ、現代化学の多くの分野で必要とされる基礎知識を提供している。
目次
はじめに

第1章 熱力学の基本骨格

 1.1 かんたんスタートガイド
  1.1.1 物質の状態を表す量と関数
  1.1.2 状態量の関係をそれらの変化によって表すこと
  1.1.3 エネルギーの保存:熱力学第1法則
  1.1.4 自発変化の方向:熱力学第2法則
  1.1.5 ガイドの終わりに
 1.2 化学熱力学への橋渡し
  1.2.1 化学反応と熱エネルギー
  1.2.2 エネルギーで物質の変化を考える
 1.3 熱力学第1法則
  1.3.1 外界とのエネルギー交換による内部エネルギー変化
  1.3.2 差分による表現
  1.3.3 微分による表現
  1.3.4 基本式
 1.4 状態量
  1.4.1 全微分と偏微分
  1.4.2 状態量の単位
  1.4.3 U (S, V )の1階偏微分と2階交差偏微分
  1.4.4 示量性と示強性
 1.5 熱力学特有のエネルギー
  1.5.1 熱力学特有のエネルギー
  1.5.2 1階偏微分と2階交差偏微分
  1.5.3 ♣熱力学ポテンシャルと自然な変数
 1.6 熱力学第2法則と自発変化
  1.6.1 内部エネルギーによる不可逆変化の表現
  1.6.2 S, V 一定の自発変化と内部エネルギーの減少
  1.6.3 U, V 一定の自発変化とエントロピーの増加
  1.6.4 T, V 一定の自発変化とヘルムホルツエネルギーの減少
  1.6.5 T, P 一定の自発変化とギブズエネルギーの減少
  1.6.6 エンタルピーとエントロピー
  1.6.7 ♣自発変化と熱力学ポテンシャル

第2章 現象論的な方法

 2.1 熱の出入りと熱力学状態量
 2.2 熱容量
  2.2.1 エンタルピーとエントロピーの計算
  2.2.2 気体の熱容量と分子のかたち
  2.2.3 固体の熱容量と原子の振動
  2.2.4 ♠液体の熱容量
 2.3 純物質の状態変化
  2.3.1 蒸発
  2.3.2 融解
  2.3.3 ギブズエネルギーの温度変化(G–T 図)
  2.3.4 ギブズエネルギーの圧力変化(G–P 図)
  2.3.5 ♠過冷却,過熱と自発変化
  2.3.6 P –T 平面上の相図
  2.3.7 クラペイロン–クラウジウスの式
  2.3.8 気液および気固相境界線
  2.3.9 固液相境界線
 2.4 純物質の三態以外への状態変化
  2.4.1 結晶の多形転移
  2.4.2 液晶相転移
  2.4.3 ♠柔粘性結晶転移
  2.4.4 相転移の分類
  2.4.5 ♠2次相転移とエーレンフェストの式
  2.4.6 ♠液体ヘリウムの超流動転移
  2.4.7 ♠磁気相転移
  2.4.8 ♠λ転移とピパードの式
  2.4.9 ♠ガラス転移
 2.5 混合物と溶液(多成分系)
  2.5.1 気体同士の混合
  2.5.2 液体同士の混合,固体と液体の混合
  2.5.3 溶液と混合エンタルピー
  2.5.4 凝固点降下と沸点上昇
  2.5.5 ♠過剰モル量と部分モル量
  2.5.6 ♠液液相分離
  2.5.7 ♠ミセル化と疎水性相互作用
  2.5.8 ♠タンパク質の変性とフォールディング
 2.6 化学反応
  2.6.1 反応熱と反応エンタルピー
  2.6.2 標準生成モルエンタルピー
  2.6.3 発熱反応,吸熱反応と自発変化
  2.6.4 平衡反応と反応ギブズエネルギー
  2.6.5 標準生成ギブズエネルギー
  2.6.6 ♠平衡の移動とル・シャトリエの原理
  2.6.7 ♠エントロピーの絶対値
  2.6.8 ♠化学電池
  2.6.9 ♠イオン化傾向と標準電極電位
 2.7 外界から力学的な力を受ける場合
  2.7.1 ♠応力
  2.7.2 ♠界面張力

第3章 モデルを用いる方法

 3.1 理想気体モデル
  3.1.1 基本式
  3.1.2 温度と圧力
  3.1.3 エントロピーの温度・体積・圧力依存性
  3.1.4 ポアソンの法則
 3.2 気体粒子間の相互作用
  3.2.1 ゲイ=リュサック–ジュールの実験
  3.2.2 ジュール–トムソンの実験
  3.2.3 圧縮率因子とビリアル展開
 3.3 ファンデルワールス気体モデル
  3.3.1 基本式
  3.3.2 圧力に対する内部エネルギーとエントロピーの寄与
  3.3.3 熱容量
  3.3.4 ゲイ=リュサック–ジュールの実験
  3.3.5 ジュール–トムソンの実験
  3.3.6 臨界点
  3.3.7 換算状態方程式と対応状態の原理
  3.3.8 ボイル温度
  3.3.9 気液相転移とヘルムホルツエネルギー
  3.3.10 マクスウェルの等面積則
  3.3.11 様々な軸による気液相境界線
  3.3.12 気液相転移とギブズエネルギー
 3.4 化学ポテンシャル
  3.4.1 定義
  3.4.2 部分モル量
 3.5 多相系の相平衡条件
  3.5.1 U, V 一定の1成分2相系
  3.5.2 T, V 一定もしくはT, P 一定の1成分2相系
  3.5.3 2成分2相系の場合
  3.5.4 部分系の示強変数とギブズ–デュエムの式
  3.5.5 ギブズの相律
 3.6 理想気体の真空中への拡散
  3.6.1 U, V 一定の場合
  3.6.2 T, V 一定の場合
 3.7 理想気体を用いた物質の混合モデル
  3.7.1 U, V 一定の場合
  3.7.2 T, V 一定の場合
  3.7.3 T, P 一定の場合
  3.7.4 混合による化学ポテンシャルの変化
 3.8 擬1成分系
  3.8.1 蒸気圧
  3.8.2 沸点上昇と凝固点降下
  3.8.3 浸透圧とファントホッフの法則
  3.8.4 蒸気圧降下とラウールの法則
 3.9 2成分の平衡を考える場合
  3.9.1 気液平衡
  3.9.2 T–x 図と蒸留の原理
 3.10 理想性からのずれ
  3.10.1 蒸気圧とT–x 図
  3.10.2 活量
  3.10.3 液液相分離
 3.11 化学反応
  3.11.1 平衡反応と平衡組成
  3.11.2 平衡の移動とファントホッフ式による解析
  3.11.3 水の電離平衡
  3.11.4 弱酸の電離平衡
  3.11.5 難溶性塩の溶解平衡と溶解度積
 3.12 外界から摂動を受ける系
  3.12.1 界面への吸着とギブズの吸着等温式
  3.12.2 化学電池とネルンストの式
  3.12.3 電位差測定
著者略歴(勝本 之晶)
福岡大学理学部化学科教授。博士(学術、東京農工大学)。
 2000年、東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科博士後期課程修了。
 関西学院大学博士研究員(理工学部)、広島大学助教(理学部化学科)を経て、
 2014年、福岡大学理学部化学科に移籍。2019年より現職。専門は高分子物理化学。

 分光測定、量子化学計算、溶液論などの分野で多数の論文を執筆し、書籍としては
『エッセンシャル化学』培風館(2015)、Molecular Spectroscopy: A Quantum
 Chemistry Approach, Wiley‐VCH (2019) , Molecular Basics of Liquids and
 Liquid-Based Materials, Springer (2021) などを分担執筆している。
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