『帝国アメリカがゆずるとき 譲歩と圧力の非対称同盟』の詳細情報

帝国アメリカがゆずるとき 譲歩と圧力の非対称同盟
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タイトル 帝国アメリカがゆずるとき 譲歩と圧力の非対称同盟
サブタイトル
著者 [著者区分]玉置 敦彦 [著・文・その他]
出版社 岩波書店 レーベル
本体価格
(予定)
5200円 シリーズ
ページ数 310p Cコード 3031
発売予定日 2024-06-21 ジャンル 専門/単行本/政治-含む国防軍事
ISBN 9784000240680 判型 A5
内容紹介
強大な力を誇る「帝国」アメリカは、日本や西欧諸国と「非対称同盟」を結んでいる。だがアメリカは同盟国に圧力をかけるだけでなく、ときに同盟国に有利となる政策を自ら選択してきた。なぜ帝国アメリカは「ゆずる」のか。ベトナム戦争期の日米・米韓・米比同盟を一次史料に基づいて検討し、非対称同盟を理論的に解明する。
目次
序 章 アメリカが「ゆずる」ということ
  はじめに
  対称同盟と非対称同盟
  譲歩の事例
  圧力の事例
  本書の議論
  二〇二一年のアフガニスタン政権崩壊と同盟の定義
  非公式の帝国と提携理論
  提携理論と非対称同盟
  意義と構成

第一章 同盟概念の再検討
 第一節 非対称同盟の四つの顔
  同盟論、あるいはゴルディアスの結び目
  力の均衡としての同盟
  共同体としての同盟
  統制としての同盟
  負担としての同盟
  非対称同盟の四つの顔――均衡・共同体・統制・負担
 第二節 主導国が求めるもの――負担分担論と同盟拘束論の展開
  主導国は何を求めるのか?
  追随国の負担増大――負担分担論の展開
  追随国の拘束――同盟拘束論と国際秩序論
  圧力による追随国の操作
  譲歩による追随国の操作
  先行研究の限界と本書の論点

第二章 非対称同盟における譲歩と圧力――提携の理論
 第一節 拘束・行動抑制・負担分担
  本章の課題と構成
  拘束――提携勢力の同意と安定の確保
  行動抑制――追随国の独自外交・武力行使の制約
  負担分担――平時の負担分担と有事の連合形成
  拘束と行動抑制・負担分担
 第二節 非対称同盟の起源――主導国は何を望むのか
  主導国は何を求めるのか
  国際秩序構想のなかの同盟
  戦略上の基本指針としてのリベラルな国際秩序の構想
  戦略構想と同盟の戦略的価値
  主導国による戦略的価値の算定――撤退の論理を手掛かりに
  戦略構想と同盟政策の連関と断層
 第三節 提携勢力と対抗勢力
  提携理論と非対称同盟
  帝国主義研究における提携理論
  提携理論の説明対象としての譲歩と圧力
  提携勢力――追随国における親主導国政権
  対抗勢力――追随国における反提携勢力集団
  提携勢力が望むもの
 第四節 提携の政治力学
  非対称同盟とは何か
  提携勢力の躊躇と追随国内の反発
  提携勢力に対する信頼と不信――提携勢力は役に立つか?
  提携勢力の安定性と提携のディレンマ――提携勢力に配慮しなければならないか?
  主導国の譲歩とその方法
  要求の撤回――譲歩①
  対抗勢力の懐柔と打倒――譲歩②
  提携勢力への期待と支援――譲歩③
  提携のディレンマにおける譲歩と圧力の交錯
  「見返り援助」の論理――圧力と譲歩の接点
  提携のディレンマと主導国内部の齟齬
  意図への不信と圧力――役に立たない提携勢力
  能力への不信と圧力
 小 結

第三章 提携理論とアメリカの非対称同盟
 第一節 西側同盟の起源
  本章の目的と構成
  戦後構想とその挫折
  帝国アメリカの支援と介入
  躊躇するアメリカとNATOの結成
  米欧関係における負担分担と拘束
 第二節 同盟なき冷戦――冷戦初期におけるアメリカの東アジア戦略
  東アジアへの注目
  躊躇するアメリカ
  戦略構想なき関与とその限界
  中枢の都合と出先の事情
 第三節 戦略構想と同盟政策の連関と断層
  均衡のための同盟形成――アメリカの集団防衛構想
  まつろわぬ同盟国――提携勢力への不信と介入
  拘束のための援助
  拘束のための要求撤回
  安定せざる提携勢力
  提携勢力は信頼できるか?
  戦略と同盟――アイゼンハワー政権後期の戦略転換
 第四節 ベトナム戦争とケネディ・ジョンソン政権の東アジア戦略
  拘束のための援助と干渉
  負担分担と地域主義
  ラオス危機と集団防衛構想の消滅
  ケネディとベトナム戦争の始まり
  リンドン・ジョンソンの戦争
  連合形成としての自由世界援助計画
  ジョンソン政権による地域主義の推進
 第五節 ベトナム戦争と東アジアの同盟政治
  なぜベトナム戦争期の東アジアか?
  譲歩と圧力を行使するとき、しないとき
  積極的参戦――オーストラリア
  同盟維持のための自発的参戦――ニュージーランド
  望まれない参戦――国府
  リソースの欠乏――タイ
  検討対象としての日本、韓国、フィリピン
  既存の歴史研究と提携理論の齟齬
  譲歩と圧力、安定性と信頼性の交錯
  事例研究の四段階──プロローグ、開戦、エスカレーション、六八年の危機

第四章 日米同盟――安定による拘束と負担分担の狭間で
 第一節 プロローグ――日本の安定を目指して
  「中立日本」への不安
  安保闘争の衝撃
  ライシャワーとジャパン・ハンズ
  池田政権の安定と負担分担要求の噴出
 第二節 開 戦――ベトナム戦争の暗雲
  アメリカの期待と不安――佐藤政権の成立
  ベトナム戦争の衝撃――一九六五年
  「大国日本」への不安と沖縄返還構想の浮上
 第三節 エスカレーション――負担分担と沖縄問題
  一時的な安定と日本への期待――一九六六年
  沖縄返還と負担分担――一九六七年
 第四節 六八年の危機――「大国日本 」への不安と本土基地削減計画
  続発する危機
  現地と中枢の齟齬
  日本本土基地返還計画の急浮上
  基地削減問題とPKO参加問題の交錯
  沖縄返還への「ポイント・オブ・ノーリターン」

第五章 米韓同盟――圧力と見返り援助の政治力学
 第一節 プロローグ――日韓国交正常化と六・三事態
  「見返り援助の典型例」としての米韓同盟?
  対韓援助削減計画と日韓国交正常化
  在韓米軍削減と日韓国交正常化をめぐる提携のディレンマ
  六・三事態と金鍾泌問題
  躊躇するアメリカ
  戒厳令と金鍾泌外遊
  躊躇のなかの圧力とその限界
 第二節 開 戦――対韓政策の転換とベトナム派兵問題の影響
  六・三事態の余波
  朴正熙訪米と日韓国交正常化
  ベトナム派兵問題の浮上
  第一次ベトナム派兵問題――見返り援助と不安定化への懸念
 第三節 エスカレーション――増派問題の政治過程
  第二次派兵決定とブラウン覚書
  米韓関係の齟齬
  第三次派兵問題の政治過程
  六七年一二月会談と第三次派兵問題の決着
 第四節 六八年の危機――不信のなかの同盟
  半島情勢緊迫
  ヴァンス使節団
  ベトナム情勢の緊迫と韓国の増派提案
  ホノルル会談と対韓政策の再転換

第六章 米比同盟――信頼と不信の同盟論
 第一節 プロローグ――マカパガル政権とベトナム戦争
  見返りの拒絶、安定のなかの支援、負担分担撤回の黙認
  マカパガルのベトナム派兵提案
  当惑のなかの歓迎
 第二節 開 戦――ベトナム支援法案における不信と圧力の政治力学
  見返り援助をめぐる攻防
  マカパガルと提携のディレンマ
  ベトナム支援法案をめぐる攻防
  上院議長マルコスとフィリピン議会政治
 第三節 エスカレーション――マルコスとPHILCAG
  ベトナム支援法案の成立
  米比交渉の展開
  マルコスへの信頼と期待
  マルコスの何を信頼したのか?
  建設工兵大隊装備供給問題
  マルコス訪米
  議会における反マルコス勢力の台頭
  PHILCAG延長問題の政治化
  マルコスの変容
 第四節 六八年の危機――PHILCAG撤退とアメリカの黙認
  一九六八年の政治闘争とPHILCAG
  PHILCAG削減とアメリカの黙認
  一定の信頼と提携勢力の不安定化

終 章 衰退する帝国と非対称同盟
  本書の主張
  学術的意義
  理論の適用範囲と同盟の定義
  沖縄問題と提携勢力の安定性
  沖縄問題と信頼し得る提携勢力
  リベラルな国際秩序の危機
  変質する国際秩序構想
  「アテナイの罠」と日米同盟の展望

 あとがき

 注
 索 引
著者略歴(玉置 敦彦)
玉置敦彦(たまき・のぶひこ)
1983年生.中央大学法学部准教授(国際政治学).東京大学法学部卒業,Boston University(フルブライト奨学生)及び Yale University(Department of History)留学を経て,東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了,博士(法学).専門は同盟論,日米関係史,アジア太平洋国際関係.
主な論文に「ジャパン・ハンズ──変容する日米関係と米政権日本専門家の視線,1965─68年」『思想』第1017号,「秩序と同盟──アメリカの「リベラルな国際秩序」戦略」『国際安全保障』第45巻第4号,「ベトナム戦争をめぐる米比関係──非対称同盟と「力のパラドックス」」『国際政治』第188号,「同盟論からみるウクライナ戦争」『思想』第1201号,他多数.
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