語られざる「火葬」のタブーに迫る渾身作
日本中が将来の右肩上がりの成長を信じていた昭和の時代、葬儀は、参列者の数を競うような壮大なスタイルで行われていた。しかしバブル経済の崩壊、そしてそこから続く「失われた30年」を経て、人の尊厳を守り、生きてきた証を残すはずの弔いは、急速に簡素化が進んでいる。 《そんな傾向に抗する気持ちが、私は年々、強くなった。人間だけが行う「葬送」という文化が失われていいのか。皆で弔い両親や先祖に畏敬の念を持って接する場所(墓)を確保する習俗は、後世に残すべきではないのか――》(「はじめに」より) 筆者の問いは、ここから始まる。 本書では日本人が「死」と「弔い」にどう向き合ってきたのか、その歴史と変遷を振り返る。さらに、そのダイナミックな時代の動きの中で暗躍した人々の生き様をたどる。 古代から続く「ケガレ」の思想と、「キヨメ」を担った人々。 「肉」と「火葬」という二大タブーを逆手に取って富と権力を手にした、明治の政商。 戦後の混乱と復興を象徴する、昭和の怪商。 争奪戦を制した、中国人経営者―― 圧倒的な取材力を持つ筆者が、語られざる“タブー”に迫る。
【編集担当からのおすすめ情報】 本作は、近著『同和のドン』で戦後史の死角に切り込んだ筆者が、日本の火葬と弔いの歴史を次なるテーマとした渾身の一作です。“人との縁”が希薄になっていく現代社会では、家族すらその例外ではありません。葬儀や墓のあり方も簡素になっていく昨今の状況に、問題意識を感じている方もいらっしゃるはず。本書はこうした多くの読者に“弔いのあり方”を再考する契機を与えてくれる一冊となっています。
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