『NHK「100分de名著」ブックス アレクシエーヴィチ 戦争は女の顔をしていない ~人びとの声を紡ぐ ~ 』の詳細情報
Amazonで予約する
|
タイトル |
NHK「100分de名著」ブックス アレクシエーヴィチ 戦争は女の顔をしていない |
サブタイトル |
人びとの声を紡ぐ |
著者 [著者区分] | 沼野 恭子 [著・文・その他]
|
出版社 |
NHK出版 |
レーベル |
|
本体価格 (予定) |
1200円 |
シリーズ |
|
ページ数 |
176p
|
Cコード |
0098 |
発売予定日 |
2024-06-25 |
ジャンル |
一般/単行本/外国文学、その他 |
ISBN |
9784140819661 |
判型 |
46 |
内容紹介 |
【はじめに】(一部改変抄録) スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは1948年、ソ連ウクライナ共和国で生まれました。父はベラルーシ人、母はウクライナ人です。生後間もなく、父の故郷であるベラルーシのミンスクに一家で移住し、七二年にベラルーシ国立大学ジャーナリズム学部を卒業。翌年から三年間、「農村新聞」紙で記者として働き、その後は「ニョーマン」誌に移ってルポルタージュ・評論部長を務めました。 『戦争は女の顔をしていない』の取材を始めたのは、この「ニョーマン」誌時代の78年です。アレクシエーヴィチは、第二次世界大戦でソ連軍に従軍した女性たちのもとに足繫く通い、戦時中の過酷な経験、忘れがたい思い出、戦後の辛い体験やトラウマなどについて、じっくり耳を傾け、録音していきました。そして五百人にものぼる人びとの声を文字で再現し、紡いで、悲しみと苦しみに満ちた壮大な交響曲『戦争は女の顔をしていない』を織りあげたのです。 その後の作品も、いずれも膨大な証言を編集して構成するという同じ手法で書かれた〈証言文学〉です。2015年にノーベル文学賞を受賞したときの理由がまさに、「多声的(ポリフォニック)な作品は、現代の苦しみと勇気にささげられた記念碑である」「入念に人間の声のコラージュを作るという独創的な創作方法を用いて、時代全体に対する私たちの理解を深めてくれる」というものでした。大部分が証言から成るノンフィクション作品にノーベル文学賞が与えられた前例はなかったので、アレクシエーヴィチの受賞は驚きをもって迎えられましたが、私は、「文学」そのものの定義が押し広げられた、画期的な出来事だったと考えています。 執筆言語は彼女自身の母語であるロシア語です。『戦争は女の顔をしていない』が単行本として出版されたのは1985年、ソ連のゴルバチョフ共産党書記長がペレストロイカを始めた年に当たります。それまで従軍女性については、ごくわずかなことしか知られていなかったのですが、『戦争は女の顔をしていない』によって初めて、約百万人もいたといわれる元女性兵たちの実態に光が当てられました。(略)80年代末までにロシア語の原著が二百万部も売れ、二十以上の外国語に訳されたそうです。 ソ連が崩壊した後、ベラルーシもウクライナも独立しますが、やがてベラルーシでは「反体制的」だという理由でアレクシエーヴィチの著作は出版できなくなり、2000年以降、彼女は難を逃れてヨーロッパを転々としました。一一年に帰国したものの、20年8月の大統領選に端を発した民主化運動で、反体制派の政権委譲調整評議会の幹部に名を連ねたことから、現在はふたたび国外で活動せざるを得ない状況が続いています。 (略)2022年2月24日に、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始め、世界情勢は大きく変化しました。ふたたび名もなき人びとが戦争に巻きこまれ、家を破壊され、家族や友人を失い、耐え難い苦しみを味わっているなかで(略)アレクシエーヴィチの著作は、ますます現実味(アクチュアリティ)を帯びてきていると思います。
|
目次 |
はじめに――人びとの声を紡ぐ 第1章 証言文学という「かたち」 第2章 ジェンダーと戦争 第3章 時代に翻弄された人びと 第4章 「感情の歴史」を描く ブックス特別章 逆走する歴史 読書案内 |
著者略歴(沼野 恭子) |
ロシア文学研究者、東京外国語大学名誉教授。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業後、東京大学大学院総合文化研究科比較文学比較文化 単位取得満期退学。専攻はロシアの近現代文学。主な研究テーマは現代ロシア女性文学、日露の文化関係、ロシアの食文化など。主著に『ロシア万華鏡──社会・文学・芸術』『アヴャンギャルドな女たち――ロシアの女性文化』(ともに五柳書院)、『夢のありか──「未来の後」のロシア文学』(作品社)など。主な翻訳書にリュドミラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』、『女が嘘をつくとき』(以上新潮社)、リュドミラ・ペトルシェフスカヤ『私のいた場所』(河出書房新社)、トゥルゲーネフ『初恋』(光文社新訳文庫)など。近著に『アレクシエーヴィチとの対話──「小さき人々」の声を求めて』(共著、岩波書店)、『ロシア文学の食卓』(ちくま文庫)。「ユリイカ」2022年7月号 特集=スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチにも登場。2024年3月17日のNHKラジオ第2の特別番組「101分目からの「100分de名著」にも出演、『戦争は女の顔をしていない』をはじめアレクシエーヴィチ作品について語った。 |