はじめに スパルタ教育の元祖 ギリシア世界におけるスパルタ/軍事強国を支えた戦士教育/後世の評判/日本における「スパルタ教育」/見直しが進む「スパルタ像」/本書のめざすもの/「トゥキュディデスの罠」
第一章 テルモピュライの戦い 不朽の名声を得た戦い/アケメネス朝ペルシアがギリシア侵攻/マラトンの戦い/テルモピュライへ/三〇〇名しか参戦しなかったスパルタ軍/「スパルタが滅ぶか王が死ぬか」/スパルタ兵は「集団となると世界最強」/ペルシアの大軍が退却/初日はギリシア軍の抗戦が成功/内通者エフィアルテス/戦い抜くか、撤退するか/壮絶を極めた最後の戦い/スパルタ王は死を覚悟していたのか/「ラケダイモン人の掟」/プラタイアの戦い/敵に後ろを見せず/息子に楯を渡した、スパルタの母/戦場からの生還者は「震える者」/同調圧力の激しさ
第二章 スパルタ人の創造 「元祖」スパルタ教育を中心に 社会全体で規律と服従を徹底的にたたき込む/現実と異なる「スパルタの幻影」/重視され統制された子作り/育てるかどうかは社会が決める/成人後も市民に鞭打ち/パイデス(少年)は丸坊主/食事の量は最低限だが、盗みは黙認/エイレンによる知的な指導/年長者との親密な関係/パイディスコイ(ティーンエイジャー)は大人への反抗を阻止された/乱闘や鞭打ちも通過儀礼/共同食事が市民の必須条件/メンバー選抜の決め手とは?/ヘボンテス(青年)から王の親衛隊を選抜/隠密部隊クリュプテイア
第三章 エウノミア(Eunomia) 秩序ある世界の成立 「リュクルゴスの改革」で国内が安定/「ヘラクレスの末裔の帰還」/ラコニアの征服/メッセニア戦争/反乱を企てたパルテニアイ/ギリシアの多くのポリスが危機的に/リュクルゴス/高く評価された国制「大レトラ」/二人の世襲の王が併存/基本方針を決める審議機関「長老会」/原則としては最終決定機関「民会」/五名の「エフォロス」は王を凌駕する権力を持つ/ポリスは国家か/「ホモノイア」で社会は安定する/理想のポリスに公教育は不可欠/経済格差を感じさせない工夫とは/徹底的に実用性を重視/市民身分の確定
第四章 ギリシアの覇者 スパルタの対外関係 領土併合という方針を棄てて、同盟へ/スパルタ側で唯一生き残ったオトリュアデス/クレオメネス一世/聡明だった王の娘/同僚の王を廃位に追い込み……/アテナイの台頭/大地震とヘイロータイの反乱/反スパルタ感情の高まり/第一次ペロポネソス戦争/ペロポネソス戦争の開戦/後世への教訓/スパルタ軍が降伏/戦間期の動き/デケレイア戦争/立役者はリュサンドロス
第五章 リュクルゴス体制のほころび 衰退期の始まり/ペロポネソス戦争後の状況/勝利の立役者リュサンドロスの策謀/「市民寡少」の現実/貧富の差があからさまに/ホモイオイ(同等者)が多数から少数へ/加速する反スパルタ/レウクトラの戦い/エパメイノンダスが用いた「斜線陣」の威力/「私たちだけが男を産むからです」/女性の恵まれた環境/性的奔放というイメージと一妻多夫制/結婚の現実/転落の軌跡/王の意義/なぜスパルタは凋落したのか
第六章 スパルタの黄昏 マケドニアの台頭/フィリッポス二世とアレクサンドロス/スパルタの苦境/アレクサンドロス死後のギリシア世界/王アレウスの叔父がスパルタへ侵攻/栄光を取り戻そうとしたギリシア/若きアギスがめざした「国制」への回帰/レオニダスが再び権力を握る/アギスの遺志を継ぐクレオメネス三世/勢力を拡大するアカイア連邦が宣戦/王がクーデターでエフォロスを殺害/改革の大義名分はでっち上げ?/勢力を取り戻したが……/クレオメネスの最期/厄介な「最後のギリシア人」フィロポイメン/ナビスがもたらした最後の輝き/生活習慣も教育も廃止/ギリシアはローマの属州に/名声の復活/都市として存続
第七章 永遠のスパルタ ブランド化への道程 スパルタ伝説の始まり/古代世界における「幻影」の展開/スパルタに好意を抱いていたローマ人/中世の「幻影」/ルネサンスでブランド化が進む/マキャベリが「最も優れた国制」と評価/絶対主義の時代における国制論/三権分立のヒントに/ルソーが熱烈に支持/アテナイとの比較/ナショナリズムの高まりとテルモピュライ/ナポレオンと『テルモピュライのレオニダス』/ドイツと民族概念/ヒトラー率いるナチスが最大限に賛美/第二次世界大戦とテルモピュライ/米ソ冷戦とペロポネソス戦争/ソ連崩壊とトゥキュディデス/大衆文化のなかのスパルタ/ブームの火付け役が米軍の推薦図書に
おわりに ポリスの多様性/スパルタは特異なポリスか/スパルタから見たギリシア世界/現代を理解するためのヒント/スパルタを知るということ
スパルタ関係参考文献リスト
あとがき |