『精神科医療の再設計 沖縄から変える日本の精神科医療』の詳細情報

精神科医療の再設計 沖縄から変える日本の精神科医療
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タイトル 精神科医療の再設計 沖縄から変える日本の精神科医療
サブタイトル
著者 [著者区分]新垣 元 [著・文・その他]
出版社 幻冬舎 レーベル
本体価格
(予定)
1600円 シリーズ
ページ数 200p Cコード 0047
発売予定日 2024-11-25 ジャンル 一般/単行本/医学・歯学・薬学
ISBN 9784344947245 判型 46
内容紹介
退院の先にある社会復帰を目指して

これからの精神科医療は
患者と地域の懸け橋となることが求められる

精神科医療は今、大きな転換期を迎えています。2024年4月からは精神科病院の入院期間に6カ月という上限が設けられ、早期の社会復帰を目指す治療が求められるようになりました。しかしこの法律に基づいて、患者にどのような治療をしていくべきか医療機関の模索が続いています。
著者は患者の早期退院とその先にある社会復帰を実現するには、外来通院に加え緊急時の相談窓口や日常生活のサポートなど、包括的な支援体制が不可欠だといいます。また、患者が地域の中で実生活を送り社会に参加するためには受け入れる地域の行政や福祉サービスとの連携も重要になり、これを進めていくためには医療機関がリーダーシップを発揮して、患者と地域の懸け橋となることが必要になると述べています。
1999年から沖縄市で精神科病院を運営している著者は、早くから「精神疾患に対するいちばんの治療は早期の退院、早期の社会復帰だ」という理念を掲げてきました。2005年には、患者の6割が3カ月以内に自宅退院することなどを要件とした「スーパー救急病棟」を県内で初めて設置したほか、早期退院した患者が地域で安心して暮らせるよう、訪問支援を行うアウトリーチケアや、精神疾患に対する地域社会の理解を深めるため、医療・福祉・教育の3領域の専門家が集まり対話を行う「琉球ダイアローグプロジェクト」を立ち上げるなど、病院だけで完結させない地域との連携に基づいた精神疾患のリハビリテーション治療を行っています。
本書では、精神疾患患者の早期退院、社会復帰を実現するために精神科医療はどうあるべきかについて著者の考えを示すとともに、医師という立場から行政や地域とどのように連携し患者の社会参加を後押ししていくべきかについても、これまでの取り組みを基に具体的に解説しています。
著者はこれからの精神科医療は地域社会が一体となって行っていくべきだと訴えています。現役の精神科医、医師を志している人だけでなく、行政に携わる人やソーシャルワーカーにもぜひ読んでほしい一冊です。
目次
はじめに

第1章 早期退院が実現しても、地域のなかで暮らすにはハードルが高い―― 社会から取り残される患者たち
「特別な病気」から「身近な病気」へ
精神疾患患者の入院期間は30年でほぼ半減
精神科病院の入院期間が短縮化した要因
早期退院後の課題と地域支援の重要性

第2章 社会が変われば、精神科医療も変わる 沖縄から見えてきた日本の精神科医療問題
精神障がい者に関する初めての法律「精神病者監護法」
医療機関での保護・治療が目的の「精神病院法」
警察の管理下から医療へ「精神衛生法」
沖縄だけ戦後も私宅監置が続いた理由
「精神障がい者は入院へ」の逆行を後押ししたライシャワー事件
開院当初、治安のためにはオーバーベッドも当たり前だった
収容から社会復帰へ流れを変えた、病院の不祥事
「精神保健福祉法」で医療と福祉の両輪に
精神分裂病が統合失調症に変更された意味
患者と犯罪者を分けた「医療観察法」
「就労移行支援事業」と「就労継続支援事業(A型、B型)」の創設
精神障がい者だけ“保護者必須”はおかしい
変化の積み重ねで今の精神科医療へ

第3章 病院を出て地域で暮らすのは患者にとって大きなチャレンジ―― いつでもサポートを受けられる場所が求められている
精神障がいの重症度は一定ではなく、医療のバックアップが欠かせない
退院するには病院以外の居場所が必要
長期入院患者の退院なしには救急機能は果たせない
患者を見守れる場所が多いほど、患者の人生も広がる
早期退院で変わった治療のゴール
薬を減らすと、各人の可能性が見えてきた
単剤化は、本人の治療意欲を引き出す
45年目の初めての退院
「悪くなったらいつでも診る」が安心につながる
入院が必要なのは統合失調症や鬱病だけではない
家族が治療の妨げになる場合は入院で距離をおく
これからの精神科病院に大きな病棟はいらない
一筋縄ではいかないダウンサイジング
一つの選択肢は介護医療院
生きづらさを抱える人を幅広く診られる外来を
クリニックで診られる人、病院の外来だからこそ診られる人
早期発見・早期治療で生活と人生を守る
オープンな対話が不安を和らげる
症状が落ちついた先の人生が少しでも楽になるように
相談から入院までワンストップで対応できる駆け込み寺に

第4章  相談支援、就労支援、施設運営…… 医療と福祉の連携で患者の自立を支える
チャレンジに失敗はつきもの
退院後の生活を見守る「訪問看護」
「退院前カンファレンス」で地域の支援者につなぐ
デイケアか? 就労支援施設か?
支える人の支えも、時には必要
生活を支える専門家と相談し合える関係を
医療につなげるタイミングが大事
精神障がい者ほどオープン就労が理想
指示の出し方を変えればうまくいく
働き方の“普通”が変われば、誰もがもっと生きやすくなる
障がいからくるストレスが犯罪に向かないように
昔の精神科病院で起きたことが学校でも起きている
聞く文化を広げる「琉球ダイアローグプロジェクト」
「聞く」は生きる力を引き出す
最初の相談をする場所に見立ての機能を
専門家が専門性を絶やさずにいられる相談窓口を

第5章  生きづらさを抱えるすべての人のために―― これからの精神科病院は、病気の治療にとどまらず地域との懸け橋となる
ステップアップは難しいからこそ予防が大事
アドバイスはしない、意思決定を支援する
いざというときにサポートしてくれる人を用意
管理する医療から、支える医療へ
それぞれの人生に付き合えるチャンスがある
オープンな問いかけで治り方が変わった
心の病気は簡単には治らない
専門家ほど聞いていない
「できる」と信じることが、自立の範囲を広げる
いろいろな人がいるから面白い

おわりに
著者略歴(新垣 元)
新垣 元(あらかき はじめ)
医療法人卯の会新垣病院理事長
1958年2月8日福岡県生まれ。1996年に父親が開設している医療法人卯の会新垣病院に入職し、1999年院長に就任。2004年には精神科病院の急性期医療参入に成功し、ノウハウを全国に広めることで「退院させる精神医療」を全国に根付かせた。2011年理事長に就任し、被災地の医療支援を開始。
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