『大適応の始めかた ~気候危機のもうひとつの争点 ~ 』の詳細情報

大適応の始めかた
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タイトル 大適応の始めかた
サブタイトル 気候危機のもうひとつの争点
著者 [著者区分]■モーガン・フィリップス [原著]
■齋藤慎子 [翻訳]
出版社 みすず書房 レーベル
本体価格
(予定)
3000円 シリーズ
ページ数 256p Cコード 0040
発売予定日 2024-06-05 ジャンル 一般/単行本/自然科学総記
ISBN 9784622097082 判型 46
内容紹介
気候変動対策には、「緩和」(温室効果ガス排出量削減)のほかに、もうひとつ大きな柱があるのをご存じだろうか。「適応」(気候変動に対応すべく、種々のインフラや営みを改変すること)である。身近なコミュニティでも、気候変動に備えた防災や作物の転換などの取り組みを「適応」の認識で結びあうことで、ノウハウを共有したりエンパワーしたりすることができる。本書は適応、気候の公正性、自治の3つをつなぐ格好の入門書だ。
CO2排出量削減だけでは、たとえ現時点での最良のシナリオが実現しても、気候危機が回避できるわけではない。つまり適応は不可避だが、問題はそのやりかたであり、良い方法と悪い方法(誤適応 mal-adaptation)について社会的に議論することが急務である。社会格差を拡大したり、気候変動緩和を妨げたりする誤適応を避け、公正な適応を進めるためには、私たち市民のリテラシーと意識、そして参加が不可欠なのだ。
「気候ジェントリフィケーション」など、筋悪な適応策と社会的不公正の連動がすでに始まっている。適応の基礎知識や世界各地の先行事例を通してこの局面を考える本書は、さまざまな立場からの議論のきっかけになるだろう。
目次
はじめに
緩和策だけで気候危機をすべて避けられるわけではなく、適応は不可避だ。また、適応と緩和を対立させる必要はまったくない。だが今後進む人類史的規模の適応は、やりかた次第で悪質なものにもなりうる。

I 沈黙

1 嵐のあとの静けさ
気候変動への適応であると公には認めずに適応を進める「不可知論的適応」が起きている。ニューヨーク州スタテン島沿岸部住民の「計画的撤退」の事例をとりあげる。

II 適応

2 適応について議論すべき5つの理由
適応がどのような枠組みで議論されるかが、これからの適応のおこなわれかたを方向づける。持続可能でない、あるいは公正でない「誤適応」についても早急に議論する必要がある。

3 どこもかしこもエアコン完備
グラスゴー、パリ、ドーハ、シドニーという4都市で始まっている適応の様相を眺める。「涼」を享受できる者とできない者の格差拡大は、すでに世界中の都市で進行している。

4 人工雪、ブドウ、銃、ダム
農業や軍事、洪水対策といった各分野の適応の様相や、米国マイアミの「気候ジェントリフィケーション」の事例、「誤適応を回避するための11のガイドライン」を紹介する。

5 自然界における適応
自然界でもすでに適応は始まっている。ホッキョクグマ、ヘビ、サンゴなどの例を見ていく。そこでも持続可能な適応とそうでない適応が見られるが、適応自体は避けがたい。

6 友好者生存
「思慮深い」適応は、コミュニティの自治の力と深く関係している。住民主体の取り組みの例として、英国ウォリック郡やネパールのソルクンブ郡デウサ村の事例を見ていく。

III 変革

7 「いやもう大変ですよ、お先真っ暗です」
もし事態が制御不能なほど悪化したら? 「ディープ・アダプテーション」など、社会システムの変革と適応の関係、およびその限界を考える試論も現れている。未来像をめぐる議論を覗き込む。

8 異なる未来、よりよい未来
新しい社会システムあるいは自治のあり方の模索と適応を相乗的に結びつけようとする、シリア自治行政区ロジャヴァの「ロジャヴァに再び緑を」運動の例を見る。

IV さまざまなストーリー

9 〈安心のストーリー〉の力に抗う
「気候変動はなんだかんだで制御可能となり、これまでどおりの暮らしは続く」というストーリーが現実の適応にどんな影響や作用を及ぼしうるか、あらためて考えてみよう。

おわりに──適応は避けられないが、誤適応は避けられる
よい(あるいは、すばらしい)大適応も、社会変革も、可能である。そのためにまず必要なのは、みなさんが議論に参加することだ。

あとがき
謝辞

日本語版刊行に寄せて(茨城大学 田村誠)
参考文献
索引
著者略歴(モーガン・フィリップス)
気候危機対策のために活動する環境慈善団体(NGO)Global Action Plan, UK(www.globalactionplan.org.uk)で教育・アウトリーチ部門のディレクターを務める。本書が初の著書。本書執筆・原著刊行時(2016-2022)は同じく英国の環境慈善団体The Glacier Trust(theglaciertrust.org)の共同ディレクター。現在もアドバイザーとして関わり続けているThe Glacier Trustは、ネパールの山岳地帯のコミュニティの気候変動への適応を支援する活動をおこなっている。それ以前の2013-2016年は環境慈善団体Keep Britain Tidyによる英国のエコ・スクール・プロジェクト(www.eco-schools.org.uk)のリーダー、ブルネル大学講師(2009-2010)などを務めた。2008年にPh.D.取得後(博士研究テーマは持続可能性に関する教育)、現在まで一貫して気候環境問題の教育や気候危機対策の支援に携わっている。
著者略歴(齋藤慎子)
(さいとう・のりこ)
英日・西日翻訳者、ライター。ファディマン『精霊に捕まって倒れる』(共訳、みすず書房)、シェリダン『世界一シンプルな増客マシーンの作り方』(実業之日本社)、ノア『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪!?』(英治出版)、ローゼンブラム『最新脳科学でわかった五感の驚異』(講談社)、ケープルズ『ザ・コピーライティング』(ダイヤモンド社)、ケネディ『究極のセールスレター』(東洋経済新報社)、アラン『アランの幸福論』、グラシアン『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵』(以上ディスカヴァー・トゥエンティワン)などのほか、ビジネス書の訳書多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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