『研究叢書575 枕草子漢文受容論』の詳細情報

研究叢書575 枕草子漢文受容論
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タイトル 研究叢書575 枕草子漢文受容論
サブタイトル
著者 [著者区分]張 培華 [著・文・その他]
出版社 和泉書院 レーベル 研究叢書
本体価格
(予定)
10000円 シリーズ
ページ数 440p Cコード 3395
発売予定日 2024-12-03 ジャンル 専門/全書・双書/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN 9784757611078 判型 A5
内容紹介
著者が二十年近く研鑽を積み、『枕草子』と漢文との関係について考案した研究書。まず、代表的な『枕草子』の章段において漢語表現や漢文受容に焦点を当て、詩、賦、伝奇、類書などの中国古典文学のジャンルを取り入れ、寓意や暗喩といった手法を解析し、従来未解明であった問題に新たな解釈を提示した。また、『枕草子』と『白氏文集』を中心に考察し、『源氏物語』に比べて『枕草子』には圧倒的に感傷詩が多いことを明らかにし、その背後にある感傷の美を浮き彫りにし、紫式部と清少納言の異なる受容感覚も分析した。さらに、最も古い『枕草子』写本である前田家本にしか見られない、漢文原典に忠実な特徴を解明し、従来の前田家本に関する楠説の信憑性についても再検討の必要があることを示した。附編では周作人の翻訳の経緯とその実態について考察した。附録として、『枕草子』に関する漢文論文の文献をまとめ、唐代の重要な『賦譜』全文を翻刻している。
目次
口絵 重要文化財『賦譜・文筆要決』冒頭
凡例

 序章 漢文の環境と『枕草子』の創生
  一 はじめに
  二 一条天皇時代の漢文の営み
  三 『枕草子』漢文受容の研究史
  四 本書の狙いと構成
  五 おわりに

第一部『枕草子』の基層と漢文
 第一章 『枕草子』「春はあけぼの」章段考―詩と賦の構成をめぐって―
  一 はじめに
  二 「春はあけぼの」に見える和漢韻文の形式
  三 「仮名序」と「春はあけぼの」の「対句」表現
  四 唐『賦譜』「新賦」の四段と文字数
  五 「春はあけぼの」と「新賦」の四段の文字数
  六 おわりに
 第二章 『枕草子』「心ときめきするもの」章段考―「唐鏡のすこし暗き、見たる」を中心に―
  一 はじめに
  二 三系統一種本文に関する「唐鏡」の表現
  三 研究史による「唐鏡」の解釈
  四 平安文学における「唐鏡」及び「鏡」と漢籍の影響
  五 唐代伝奇小説『古鏡記』による「暗い鏡」―「宝鏡」
  六 おわりに
 第三章 『枕草子』「文は」章段考―「新賦」を中心に―
  一 はじめに
  二 先行研究による問題点
  三 萩谷説に関する問題について
  四 『賦譜』に見える「古賦」と「新賦」の区別
  五 『賦譜』成立及び日本への流入時期
  六 おわりに
 第四章 『枕草子』「九月二十日あまりのほど」章段考―「月の窓より洩り」を中心に―
  一 はじめに
  二 「九月二十日」はいつの「年」なのか
  三 「人歌よむかし」の「人」や「歌」
  四 仮名文学における「窓」
  五 「詩」の世界における「窓」
  六 「窓」から射し込む「月光」
  七 おわりに
 第五章 『枕草子』「三条の宮におはしますころ」章段考―「青ざし」を中心に―
  一 はじめに
  二 「青ざし」の先行の解釈
  三 「青ざし」の実態
  四 「青ざし」と「青刺」
  五 薬草としての青刺の薊
  六 おわりに
 第六章 『枕草子』「雲は」章段考―「朝にさる色」を中心に―
  一 はじめに
  二 先行研究の解釈と問題の所在
  三 萩谷説の疑問
  四 高橋の指摘の問題
  五 沈約「朝雲曲」における「多異色」
  六 おわりに

第二部『枕草子』と『白氏文集』
 第七章 清少納言と白居易の詩的な寓意―「花や蝶や」と「萎花蝶飛去」―
  一 はじめに
  二 「花や蝶や」の先行の解釈
  三 「花や蝶や」と和漢文学の表現
  四 定子「花や蝶や」と白居易「萎花蝶飛去」の寓意
  五 おわりに
 第八章 清少納言と白居易の詩的な意象―「柳・雨・稚児」と「眉・扇・塵」―
  一 はじめに
  二 詩的な心象と意象
  三 春の「柳」と「眉」の意象
  四 秋の「雨」と「扇」の意象
  五 「稚児」と「塵」の意象
  六 おわりに
 第九章 清少納言と白居易及び元稹の詩的な手法―「蚊の細声・蚊の睫」と「微細・蚊睫」―
  一 はじめに
  二 「蚊の細声」と「蚊の睫」及び問題の所在
  三 『枕草子』前後の文献における「蚊」の表現
  四 白居易と元稹の詩作における「蚊」の「細い」イメージ
  五 おわりに
 第十章 『枕草子』「跋文」の「枕」と感傷詩―池田説をめぐって―
  一 はじめに
  二 諸説の問題と解読のヒント
  三 池田亀鑑の指摘に関する問題:季節的ずれ
  四 清少納言と白居易の友人:伊周と元稹の左遷
  五 定子からの「紙」と清少納言の「里」及び『枕草子』執筆
  六 おわりに
 第十一章 『枕草子』と『源氏物語』における『白氏文集』―「感傷詩」を中心に―
  一 はじめに
  二 『枕草子』と『源氏物語』における『白氏文集』総覧
  三 「長恨歌」の引用から見た『枕草子』と『源氏物語』
  四 「感傷詩」引用から見た『枕草子』背後の悲傷
  五 おわりに
 第十二章『紫式部日記』における「真名書きちらし」考―清少納言批評を中心に―
  一 はじめに
  二 先行「真名書きちらし」の解釈
  三 「真名書きちらし」と「漢学の才をひけらかす」の変容
  四 「真名書きちらし」と紫式部「書」の見る目
  五 清少納言の『白氏文集』詩句書写の可能性
  六 おわりに

第三部 前田家本『枕草子』の本文と漢文
 第十三章 前田家本『枕草子』本文再検証―漢籍に由来する表現から見た楠説―
  一 はじめに
  二 「文は」章段の漢籍に関する齟齬
  三 前田家本本文と三巻本本文との関係
  四 漢詩文引用から見た前田家本と三巻本との接近
   1 香炉峰の雪 2 九品蓮台の間 3 声明王のねぶりをおどろかす 4 岸の額に生ふらむ
  五 おわりに
 第十四章 前田家本『枕草子』本文の特徴―漢籍の原典から見た引用態度―
  一 はじめに
  二 「木の花は」の章段の「黄金の玉」
  三 「菩提といふ寺に」の章段の「上中」
   1 本文の差異と典拠 2 前田家本本文「上中」
  四 「六月廿余日ばかりに」の章段の「一葉」
  五 おわりに
 第十五章 前田家本『枕草子』「文は」章段再考―「こたいほんき」を中心に―
  一 はじめに
  二 三巻本「五帝本紀」の問題
  三 前田家本「こたいほんき」の啓示
  四 「旧五代史」と「新五代史」及び「本紀」
  五 おわりに
 
 終章 まとめと展望
  一 はじめに
  二 詩賦の方法と唐代伝奇及び類書の発想
  三 『白氏文集』「感傷詩」の内在と『枕草子』背後の悲傷
  四 前田家本の本文にしか見えない漢文の特質
  五 おわりに

 附編 周作人訳『枕草子』の経緯と実態
  一 はじめに
  二 周作人と魯迅及び「周恩来」への手紙
  三 周作人訳『枕草子』と「未出版」及び原因
  四 出版社の「凡例」と底本の問題
  五 周作人訳『枕草子』の心情と生活の実態
  六 おわりに

 附録資料一 主要『枕草子』漢文文献論文一覧(1919〜2022)
 附録資料二 唐代『賦譜』本文
 概説/凡例 
 賦譜一巻

 初出一覧
 索引(人名 書名・作品名)
 あとがき
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