◆第三句集
寒暁の光砂柱に及びけり
砂丘という静寂が生む沈黙の鼓動。
移ろう季節のなか、幽玄と神秘が織り成す風土に寄り添う作者がいる。
句集『砂柱』全編に広がるのは紛れもなく自身の生きるという沈黙の鼓動である。
帯・鳥居真里子
◆作品紹介
春水に水の階段ありにけり
どうしやうも無きほどに濡れ孕鹿
流木に鳥の骸に霾れり
葭切へどの声をもて返さうか
睡蓮へ水のゆらぎのおよびけり
漁火と呼び合ふやうに今日の月
潮騒や花辣韮の疎に密に
冬虹の残像とどめ砂丘かな
深海はざわつく頃か雪明り
雪激し戦場も斯く雪降るか
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