◆第二句集
前著『プリズム』に次ぐ由実氏第二句集。
十年を経た作者の個性は、想い濃く温みを加えて、さらに豊かに開く。
その分光のなんと清々しくあざやかであるか。
作者はそれを十分に知らせてくれた。
帯より・島端謙吉
◆自選十二句
胸の子と影をひとつに初御空
退さりても退さりてもなほ花辛夷
波の紋踏みて汐干の人戻る
春夕焼みんな巻毛の天使像
湯にひらく赤子の五指や新樹光
切尖まで水のいのちの花あやめ
黒南風や天水盤に鋳物師の名
中今の母の背拭ふ良夜かな
小説の中の雨音黒葡萄
長き夜のじゆごんのやうな抱き枕
ひだまりの椅子に母載る小春かな
雪雲や海までつづく祈りの灯
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