鬼の目にも涙。涙が集まって美しい湖を五つ作った。 TV『まんが日本昔ばなし』を16年もの間、演出、作画した前田こうせいは、その間もずっと河口湖で絵筆を取り続けた富士の麓の画家です。彼が画業60年を経て世に問う、桃太郎と富士山の新たな伝説の絵本『約束』は、日本人の誰もが知っているお伽噺『桃太郎』のスピンオフであり、日本人だけでなく、昨今は海外からも遠路はるばる人々が訪れ、仰ぎ見る富士山と富士五湖の誕生に光を当てます。だから、この絵本には英語とスペイン語の対訳がつけられています。富士山は知っていても、桃太郎のことは全く知らない世界中の人々にも届くように。 ペーソスと懐かしさに溢れる『まんが日本昔ばなし』で、愛くるしくも悲しい映画『ごんぎつね』で、前田こうせいワールドに触れてきた日本人に新たに降り注ぐ幼子の頃の原風景。山に芝刈りに行くおじいさん、川に洗濯に行くおばあさん、どんぶらこと流れてくる桃、きびだんごを頬張る桃太郎、犬・猿・雉、鬼そして富士山。前田こうせいが絵にしてもう一度私たちに見せてくれます。大人が先ず郷愁に浸ってから、子どもに読み聞かせたい絵本です。
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