《「あなたについて教えてください」と聞かれても絶対最後まで話さないような、そんな記憶や体験について語ってもらう場を作ることが、私の仕事だった——》 対等性と自由が尊重された集団のなかで対話を行い、個々人が抱える問題や症状からの回復を目指す「回復共同体(TC)」。映画『プリズン・サークル』の舞台となった島根県の官民協働刑務所で、日本初となるTCの立ち上げに携わった心理士が、その実践を初めて綴る。
[目次] 序章 アミティの門を叩く——変化への入口
第I部 回復共同体と出会う 第1章 「援助職」という名の盾——少年鑑別所にて 第2章 専門家役割の模索——アミティとの出会いまで コラム1 グループが健康的な機能を発揮できないとき 第3章 回復共同体構築への準備——対話にならない会話 コラム2 TCの歴史 コラム3 「被害者等の心情等の聴取・伝達制度」に思うこと
第II部 回復共同体をともにつくる 第4章 罰を受ける場としての刑務所——トラウマティックな組織の住人たち コラム4 囚人化と犯罪者化 第5章 対話の文化を持ち込む——変化のための土壌づくり 第6章 話すことは放すこと——被害者から加害者へ、そして一人の「人」へ 第7章 対話の文化を根づかせる——回復共同体の成熟 コラム5 TCに関する当事者のネガティブな意見 第III部 回復共同体を支える 第8章 刑務官という役割——トラウマティックな組織の職員たち コラム6 組織のトラウマ コラム7 トラウマインフォームドケアの流行に思うこと 第9章 専門職もつらいよ——支援者集団の反応 第10章 援助職自身の成長と回復に向けて——手放すものとつかむもの 第IV部 回復共同体から離れて 第11章 つながりを社会へ——訓練生たちのその後 第12章 対話の場を広げる——治療法から尊重の文化へ あとがき 文献一覧
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