『文庫 政治家はなぜ「粛々」を好むのか ~漢字の擬態語あれこれ ~ 』の詳細情報

文庫 政治家はなぜ「粛々」を好むのか
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タイトル 文庫 政治家はなぜ「粛々」を好むのか
サブタイトル 漢字の擬態語あれこれ
著者 [著者区分]円満字 二郎 [著・文・その他]
出版社 草思社 レーベル
本体価格
(予定)
1000円 シリーズ 草思社文庫
ページ数 264p Cコード 0195
発売予定日 2024-08-05 ジャンル 一般/文庫/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN 9784794227386 判型 文庫(A6)
内容紹介
「粛々」は、もともと中国の古典では「鳥のはばたき」や「寒風の吹きすさび」を表すことば。
それがなぜ、日本に溶け込む過程で、現代の政治家が「法案を粛々と否決する」などと
好んで口にすることばへと変化していったのか。
古代中国から現代日本へと至る、漢字の擬態語の日本語化の歴史を
中国古典にまで掘り下げてたどる。

<内容より>

プロローグそのことばはどこから来たか?

第1章〝漢字の擬態語〞入門
1 お堂と「堂々」は関係あるか?
2 鐘は「丁寧」に叩きましょう
3 「揶揄」が「手」へんである理由
4 〝漢字の擬態語〞を眺め渡す

第2章中国語から日本語へ
1 「逍遥」を楽しむ男たち
2 酒飲みは「酩酊」、お年寄りは「矍鑠」
3 日本の馬は「蕭々」とは鳴かない
4 高音は夜、「切々」と響く
5 どれを選ぶか「逡巡」しつつ

第3章受け継がれる〝ことば〞
1 「悠々」としていても見つからない
2 風にまかせて「飄々」と
3 あの大声には「辟易」するなあ
4 オレたちとの違いは「歴々」としている

第4章変化の中のきらめき
1 人びとが「潑剌」とし始めたころ
2 否定できない「齷齪」とした現実
3 政治家が「粛々」を好むわけ
4 最後の最後に「颯爽」と登場?

エピローグ 〝ことば〞の大河のほとりで
目次
プロローグそのことばはどこから来たか?

第1章〝漢字の擬態語〞入門

1 お堂と「堂々」は関係あるか?
擬態語とは何か?/擬態語と漢字の〝意味〞/あんまりりっぱなヤツだから――『論語』の「堂々」/一緒にたのしくボランティア?/かしこい戦争のしかた――『孫子』の「堂々」/〝感覚〞を〝響き〞に託す

2 鐘は「丁寧」に叩きましょう
〝響き〞優先、〝意味〞は二の次/擬態語は副詞とは限らない/心やさしい召し使いたち――張籍「疾に臥す」の「丁寧」/あれだけくどくど注意したのに――『三国志演義』の「叮寧」/畳語と畳韻語

3 「揶揄」が「手」へんである理由
対象を動詞にまで広げてみる/負け戦になど手を貸すものか!――『後漢書』の「邪揄」/言ったヤツが得をする?――『晋陽秋』の「捓揄」/擬態語にはニュアンスがつきまとう/双声語と〝漢字の擬態語〞の条件

4 〝漢字の擬態語〞を眺め渡す
擬態語の〝響き〞の特徴/汲々、綿々、洋々、濛々――畳語の例/朦朧、齟齬、爛漫、惨澹――畳韻語の例/滑稽、唐突、瀟洒、髣髴――双声語の例/〝漢字の擬態語〞はいくつあるか/〝漢字の擬態語〞はなぜ存在するのか?

第2章中国語から日本語へ

1 「逍遥」を楽しむ男たち
大伴旅人、魚釣りの乙女に出会う/社会にあるのは苦しみばかり/王になるより自由がいい――『荘子』の「逍遥」/自由と自然へのあこがれ/都を離れて南へ西へ――『伊勢物語』と『大鏡』の「逍遥」/何度も接しているうちに

2 酒飲みは「酩酊」、お年寄りは「矍鑠」
大伴家持、越中の国で病に臥す/へべれけになって帰ってくる――「襄陽童児の歌」の「酩酊」/酒飲みたちに愛されて/老将の決めのポーズ――『後漢書』の「矍鑠」/擬態語はエピソードに乗って

3 日本の馬は「蕭々」とは鳴かない
阿蘇山に雨は降る――三好達治『大阿蘇』の「蕭々」/決死の旅に風は吹く――『史記』「刺客列伝」の「蕭々」/雨、木の葉、そして馬――唐詩の「蕭々」/静かな音がかもし出す/〝音〞がなくては感じ取れない

4 高音は夜、「切々」と響く
擬態語と擬音語/友人と励まし合う――『論語』の「切々」/秋の夜の虫の鳴き声――白楽天「村夜」の「切々」/月光に響く琵琶の音/ひそかに語るように――白楽天「琵琶行」の「切々」/あの人の願いを叶えてあげたい!――鴨長明『発心集』の「切々」/擬音語が擬態語に変わるとき

5 どれを選ぶか「逡巡」しつつ
弓の修業は命がけ――『列子』の「逡巡」/いくら貧しかろうとも――『荘子』の「逡巡」/冥府の王と下役人――『閲微草堂筆記』の「逡巡」/愛妻の墓の前で――白楽天「長恨歌」の「躊躇」/〝漢字の擬態語〞の限界

第3章受け継がれる〝ことば〞

1 「悠々」としていても見つからない
〝失われる〞ことをめぐって/青いジャケットがよく似合う――『詩経』の「悠々」/流れる雲と、はるかな時と――王勃「滕王閣」の「悠々」/世の中お金がすべてなのさ――張謂「長安の主人の壁に題す」の「悠々」/遅かりし由良之助!――『仮名手本忠臣蔵』の「悠々」/たとえキツネであったとしても――『聊斎志異』の「楚々」/単なるコピーではなく

2 風にまかせて「飄々」と
ドロップ・アウトする勇気/故郷へ帰る船の上で――陶淵明「帰去来の辞」の「飄々」/流浪の旅のはてに――杜甫「旅夜書懐」の「飄々」/仙人の世界へ登る――蘇軾「前赤壁の賦」の「飄々」/妖僧が空からやって来る――『椿説弓張月』の「飄々」/やがて馬琴自身の表現となる

3 あの大声には「辟易」するなあ
猫も坊っちゃんもうんざりする/鬼の形相で怒鳴られて――『史記』「項羽本紀」の「辟易」/〝語りもの〞としての『史記』/新田義貞も負けてはいない!――『太平記』の「辟易」/お江戸の女性はことばが荒い?――『浮世風呂』の「辟易」/絶大な影響力と、強靱な独創性

4 オレたちとの違いは「歴々」としている
お偉方を指すことば/コオロギの鳴く夜に――「古詩十九首」の「歴々」/伝説の黄色い鶴/ピントはシャープからソフトへ――崔顥「黄鶴楼」の「歴々」/戦国武将、なにわのセレブ――井原西鶴の「歴々」/受け継がれることの証

第4章変化の中のきらめき

1 人びとが「潑剌」とし始めたころ
日本オリジナルの漢字文化/ごあいさつに魚を提げて――李白「中都の小吏」の詩の「跋剌」/唐の詩人はお魚が好き?/魚の世界から人間の世界へ/世紀をまたいだその先には――二葉亭・漱石・啄木の「潑剌」/近代の光と影

2 否定できない「齷齪」とした現実
明治の青春の終わり/つまらぬヤツには仕えない――『史記』の「握齱」/五〇歳でやっと合格!――孟郊「登科の後」の「齷齪」/マイナス・イメージの膨脹/否定の中の自己憐憫――島崎藤村の「齷齪」/模倣をくり返したその先に

3 政治家が「粛々」を好むわけ
いつもと変わらず進めていく/悲劇の美女に吹く風は――蔡琰「悲憤詩」の「粛々」/敵の本陣を奇襲せよ!――頼山陽の「鞭声粛々」/闇に響く鞭の音/集団は歩調をそろえて――明治から昭和へかけての「粛々」/頼山陽が成し遂げたこと/変化はなおも続く

4 最後の最後に「颯爽」と登場?
あなたの絵はすばらしい!――杜甫「丹青の引」の「颯爽」/絵の中から抜け出せない/馬上の将軍から女性の鼻へ――徳冨蘆花と夏目漱石の「颯爽」/中国のりりしい女性たち――毛沢東の「颯爽」/ことばの運命を変えるもの

エピローグ 〝ことば〞の大河のほとりで
著者略歴(円満字 二郎)
円満字 二郎(えんまんじ・じろう)
1967 年、兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、出版社で国語教科書や漢和辞典などの担当編集者として働く。2008 年、退職してフリーに。著書に、『漢字ときあかし辞典』『部首ときあかし辞典』『漢字の使い分けときあかし辞典』『四字熟語ときあかし辞典』(以上、研究社)、『漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)、『漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば』『漢字の動物苑 鳥・虫・けものと季節のうつろい』(以上、岩波書店)、『雨かんむり漢字読本』『難読漢字の奥義書』(以上、草思社文庫)などがある。
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