『空っぽの時代に読む 山川方夫&三島由紀夫 ~ドストエフスキー文学に絡めて ~ 』の詳細情報

空っぽの時代に読む 山川方夫&三島由紀夫
AmazonカートAmazonで予約する
タイトル 空っぽの時代に読む 山川方夫&三島由紀夫
サブタイトル ドストエフスキー文学に絡めて
著者 [著者区分]清水 正 [著・文・その他]
出版社 鳥影社 レーベル
本体価格
(予定)
3800円 シリーズ
ページ数 548p Cコード 0095
発売予定日 2025-12-15 ジャンル 一般/単行本/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN 9784867822050 判型 46
内容紹介
ドストエフスキー文学を背景に

山川方夫の深淵を透視、
三島事件の〈秘中の秘〉を剔抉する。

〈空っぽ〉の時代に〈空っぽ〉を〈空っぽ〉が批評する。
目次
第一部 山川方夫の深淵  ―『最初の秋』と『海岸公園』を読む─  
1 山崎行太郎『小説山川方夫伝』を読んで
2 家族構成と家族の確執
3 母と父との確執
4 祖父と母の確執 
5 〈私小説〉の事実と虚構 ―父の愛人と祖父の妾Sをめぐって― 
6 家族制度に呪縛された母と〈私〉の関係 
7 父の死をめぐって ―私小説家の創作の秘密― 
8 父と〈私〉の関係 ―父の死の謎―
9 〈父の死〉に隠されたドラマ ―〈私〉と母の秘中の秘― 
10 〈秘中の秘〉を描く独自の技法1 ―脳溢血による〈父の死〉― 
11 〈秘中の秘〉を描く独自の技法2 ―〈意味もなく大声で喚きたい衝動〉に駆られる〈私〉― 
12 〈秘中の秘〉を描く独自の技法3 ―〈暗い納戸の中〉で交わした母と〈私〉の密約― 
13 〈秘中の秘〉を描く独自の技法4 ―〈秘中の秘〉と神の問題―
14 〈秘中の秘〉を描く独自の技法5 ―母に〈父の死〉を告げる場面(イワンとスメルジャコフの対話場面を想起)― 
15 〈秘中の秘〉を描く独自の技法6 ―次姉の登場― 
16 〈秘中の秘〉を描く独自の技法7 ―〈ひどく美しい女〉― 
17 〈秘中の秘〉を描く独自の技法8 ―オイディプスとイオカステの濡れ場を想起― 
18 山川方夫と世界文学 ―山川の〈宿痾〉をめぐって―
19 江藤淳の「山川方夫と私」をめぐって ―〈宿痾の病〉と〈新しい文体〉― 
20 『最初の秋』に潜む〈てんかん〉 ―世界文学と関連づけて― 
21 〈てんかん〉をめぐって ―ドストエフスキーの場合― 
22 山川方夫の〈緑〉 ―宿痾の秘密・ドストエフスキーとの関連において― 
23 次姉の存在をめぐって ―【場面X】の恐るべき重層性―
24 【場面X】 ―小津安二郎の映画技法にからめて―  
25 水平移動するカメラ ―〈どてら姿の少佐〉―  
26 冷静な眼差しがとらえたもの ―秩序崩壊と絶望― 
27 妾と少佐 ―厳しい現実の受容 ― 
28 帰途につく沈黙の家族
29 〈その日〉と〈大晦日の火葬場〉 
30 〈父の葬式の直後〉に展開される醜態 ―描かれなかった二日間―  
31 海の見える場所 ―父との〈二人きり〉― 
32 〈膨大な海〉と水平描写に秘められたオイディプス劇  
33 母と祖父の口喧嘩 ―虚飾を剥がされた人間の裸像― 
34 母と祖父の対立葛藤 ―〈こわい女〉の感情の爆発― 
35 父亡き後の〈私〉の役割と母の奮闘 ―〈ぎこちない平和〉の実態― 
36 〈山川家〉の家計の実態 ―水平的磁場で描かれた世界―  
37 家長としての〈私〉の使命 ―現実の山川方夫に照らして― 
38 描写の水平的磁場と批評の考古学 ―祖父からの手紙― 
39 厄介者で自己本位の祖父 ―調停役を演じる〈私〉―  
40 祖父の条件 ―調停役〈私〉の非力― 
41 〈エゴイズム〉と〈支配〉 ―プロレス観戦に見立てて―  
42 〈母〉の秘めたる〈踏み越え〉のドラマ ―ロジオンの母プリヘーリヤに重ねて― 
43 調停役〈私〉の置かれた現況 ―〈私〉を支配する〈死の観念〉―
44 長姉と青酸加里 ―衝動的な〈思いつき〉・自殺衝動と演技―
45 長姉の孤独 ―〈自分の冬のセーター〉―
46 〈私〉の孤独 ―〈薄暗い裸電球〉― 
47 〈青酸加里〉と〈黄色い汚し染み〉 ―敗戦後の虚無―
48 敗戦後の空漠さ ―天皇と一神教の神―
49 〈自殺〉の回避 ―山川方夫とドストエフスキーの小説作法の違い―
50 自殺劇後の〈私〉 ―長姉の縁談をめぐって―
51 長姉の〈わがままと不決断〉 ―〈私〉と長姉の〈二人きり〉の秘密― 
52 一家心中の夢 ―夢の中の〈死〉― 
53 夢の中で死を免れた存在 ―友人Kの出現― 
54 〈夢〉から目覚めた〈私〉 ―家族内存在としての〈私〉― 
55 巨大な赤ん坊 ―グロテスクな九十歳の裸体― 
56 祖父とファマー・フォミッチ ―ドストエフスキーが描いた〈カーニバルの王〉を想起― 
57 カーニバル空間での〈私〉の役割 ―立会人の〈決断〉―
58 〈醜怪な我執のかたまり〉 ―祖父を妾Sの養子宅へ送り届ける〈私〉の煩悶―
59 記憶の底から蘇る過去の女 ―やさしすぎる残酷さ―
60 冷徹な〈私〉の自己分析 ―書くしかない人間の宿痾―
61 〈姥捨て〉を決意した〈私〉の深淵 ―〈無感覚な「死」の状態〉―  
62 〈私〉のトラウマをなす原風景 ―〈立入り禁止〉の海岸公園―  
63 養子夫婦の家にたどり着く ―大幅に省略された養子夫婦― 
64 祖父を養子宅に届けるまでのプロセス ―引っ越し前夜と当日の朝―
65 引っ越し当日 ―Sにとっての〈新生〉、祖父と〈私〉の〈二人きり〉― 
66 祖父の狂歌をめぐって ―感情の爆発―
67 感情の爆発後の沈黙
68 祖父の発した一言 
69 祖父を送り届けた帰り ―〈私〉の不安と性の欲望―
70 〈自分一人〉への逃走 ―ロジオン・ラスコーリニコフに絡めて― 
71 〈白い風〉が吹きめぐる光景 ―〈一箇の生けるシカバネ〉とポルフィーリイ―
72 独りよがりの幻想家 ―過去の女Kとの思い出―
73 強風の吹く冬の海岸公園 ―危機的実存の実相―
74 私小説家の運命 ―山川方夫の〈事故死〉― 
75 空虚な実存 ―〈海〉〈空〉〈風〉〈虚無〉〈空白〉そして〈死〉―
76 私小説の深淵と叙景 ―作品のみが〈行為〉―
77 気丈な〈母〉の肖像 ―息子の格闘・万年芥川賞候補―

第二部 三島由紀夫の事件と文学
1 山川方夫から三島由紀夫へ
2 〈いい子〉の兵役回避
3 三島事件 ―〈檄〉と〈割腹自殺〉―
4 『英霊の声』を読む ―天皇殺しと天皇の復権― 
5 『豊饒の海』を読む
6 本多繁邦 ―〈輪廻転生〉を信じる〈論理の人〉―
7 『奔馬』の飯沼勲 ―神風連思想を継承する行動家と論理の人―
8 『天人五衰』の安永透 ―認識を超えて〈見る〉者―
9 〈七十六歳〉の本多繁邦
10 三島の行動美学の欺瞞
11 〈八十一歳〉になった本多繁邦
12 「昭和四十五年十一月二十五日」に隠された謎
13 自死の絶対化と延命の本多繁邦
14 『葉隠入門』 ―常朝のニヒリズムと三島の武士道―
15 『道義的革命』の論理 ―自分が神様になって所信を貫く―
16 敗戦後日本の大いなる欺瞞 ―人間天皇下の日本―
17 天皇をめぐる三島由紀夫の〈秘中の秘〉 
18 「果たし得ていない約束」
19 天皇はイエス・キリスト? ―社会学者の論理と文学者の論理―
20 割腹自殺と兵役免除
21 〈いい子〉公威と父梓の関係
22 自分ではない何者かになりたいという欲望 ―〈空っぽ〉の欲望―
23 〈空っぽ〉の神と一神教の神 ―不信と懐疑の持続―
24 『地下生活者の手記』 ―「馬鹿ばかりが行動できる」― 
25 『地下生活者の手記』と『仮面の告白』
26 「馬鹿とやくざ者が四十以上も生きるのだ」 ―本多繁邦と透―
27 「私もひとつ自分の話をしよう」 ―〈意識的な拱手傍観者〉と〈冒険の案出者〉―
28 「意欲は全生活の発現」 ―三島事件と〈意欲〉―
29 精神の分裂を招き寄せない三島の〈理性〉と〈意欲〉 
30 〈自由意志の法則〉と〈自由〉
31 〈二× 二=四〉と〈二× 二=五〉 ―〈AI〉と〈破壊と混沌を熱愛する人間〉―
32 人類滅亡の夢 ―〈理性と意志を賦与された旋毛虫〉―
33 〈ツクリモノ〉としての三島小説 ―作者の統括下に置かれた人物たち―
34 「何もない」 ―本多繁邦が見る究極の光景―
35 「何もない」 ─敗戦後の日本人の欺瞞と〈大いなるしたたかさ〉─
36 空虚な実存 ―人間天皇と平和憲法がもたらしたもの―
37 日本人の深遠な〈曖昧さ〉

第三部 〈何もない〉敗戦後の虚無とピョートルの〈キョム〉 ―山川方夫&三島由紀夫からドストエフスキーの『悪霊』の世界へ― 
1 山川方夫と三島由紀夫
2 ピョートルの虚無
3 安永透とニコライとキリーロフ
4 〈見る人〉透と本多繁邦
5 キリーロフの自殺と三島由紀夫の自殺
6 日常化した絶望と虚無
7 対話で浮かび上がってくるドストエフスキーの人物像
8 ニコライの自殺は〈他殺〉
9 ドストエフスキーの人物と三島由紀夫の人物
10 キリーロフの人神思想と三島由紀夫の天皇観
11 キリーロフの〈永久調和の瞬間〉
12 キリーロフの〈すべてはすばらしい〉とてんかん病理 ―ニーチェの汎神論的瞬間との近似性―
13 キリーロフと〈十字架にかけられた者〉 ―ニコライとの対話―
14 ニコライの〈告白〉 ―少女マトリョーシャ凌辱―
15 キリスト教圏内の小説家とわたしとニーチェ
16 ニコライの虚無とピョートルの〈キョム〉
17 ニコライの〈無限につづく欺瞞の列の最後の欺瞞〉
18 〈生温き人〉ニコライの〈自殺〉 ―作者の巧妙な仕掛け―  
19 わたしの批評方法 ―テキストの解体と再構築―
20 犯罪行為と〈良心の呵責〉 ―ロジオンの場合―
21 少女凌辱と〈良心の呵責〉 ―ニコライの場合―
22 ニコライの夢に現出する〈マトリョーシャ〉 ―良心の呵責― 
23 ロジオンの〈幻〉(видение) ―愛による復活のドラマ―
24 思弁家ロジオンの〈復活〉への疑義 ―罪意識なしの復活― 
25 〈観照〉(созерцание)の境地 ―〈神の風〉に襲撃されたロジオンと思弁にとどまる者― 
26 〈本物の幽霊〉を求めるニコライ ―現うつつではないマトリョーシャ―
27 ニコライの実存の特質性 ―〈自分の意志を完全に統御〉と〈発狂〉〈自殺〉―
28 作品に対する絶対的統括者 ―ニコライを〈復活〉させなかった作者―
29 ニコライの恐るべき試み ―秘められたステパンとニコライの関係― 
30 一神教の呪縛から解放された〈凡人の眼差し〉 ―〈キョム者〉ピョートルの眼差しに重ねて―
31 『禁色』と『悪霊』の美青年 ─南悠一とニコライ・スタヴローギン─
引用テキスト
あとがき 
著者プロフィール 
著者略歴(清水 正)
清水正(しみず・まさし)

批評家。
一九四九年二月八日千葉県我孫子に生まれる。
日本大学芸術学部文芸学科卒。
日本大学芸術学部文芸学科教授、日本大学大学院芸術学研究科教授、「江古田文学」編集長、江古田文学会会長、日本大学芸術学部図書館長などを歴任。
日芸教員時代はゼミ雑誌「ドストエフスキー研究」(No.1~28)、「ドストエフスキー曼陀羅」(No.1~9)、「日野日出志研究」(No.1~4)「Д文学通信」(No.1~1430)などを刊行。
現在はD文学研究会主宰、日本文芸家協会会員、「清水正ブログ」で批評活動を発信している。
他の書籍を検索する